⏺️発走前の展示航走
レース前に行われる「展示航走」は「スタート展示」と「周回展示」の2つがある。主にモーターや選手の調子を見るのが目的。第1競走のみ開始予定時刻が事前に告知され、以降は前レース終了後に以下の展示航走が行われる。
スタート展示では出場選手がピットアウトからスタートまで一連の所作を行う。 各選手のピット離れやコース取り、スタートタイミングなどを見るのが目的。
★スタート展示の詳細は、以下の情報が場内モニターなどで公開される。
⏺️印は大事な項目です。
- ⏺️各選手の進入コース
- ⏺️各選手のスタートタイミング(スリット写真)
以前は「スタート練習」と呼ばれ、公式の展示航走とはされていなかったが、参考にするファンも多かった。しかし、練習と本番で進入コースが異なるなどで苦情も多く一度は廃止されたが、一方でスタート練習の復活を望む声も根強くあり、予想の参考のひとつとして名称も「スタート展示」と改められて復活した。
進入についての規程変更
- 以前はスタート展示において6コースから進入した選手がレース本番で1コースに進入することが認められず、このような事態が発生した場合、当該選手は出走資格の喪失(返還欠場となり、関係する舟券は全額返還される。ただし、レース本番で2コースに入ったが、その後1コースの艇が欠場して結果的に最内になってしまった場合など審判委員長がやむを得ないと認めた場合は除く)とされていたが、この規定は2008年5月1日以降を初日とする開催から順次廃止された。
- また、従来スタート展示に出られなかった艇はレース本番で最アウトコースから進入することとされ、これを怠った場合は違反となっていたが、この規定は2009年5月1日を初日とする開催から順次廃止された。
周回展示
スタート展示後は、そのまま周回展示に移行する。 出場選手が単独で1艇ずつ2周回する(荒天の場合には1周回に短縮される場合がある)。 ⏺️ターンの攻め具合や出足(加速力)、伸びを見るのが目的。
⏺️なお、審判委員長が全力で航走していないと判断した艇や、展示航走中にエンストやプロペラ破損など何かしらのトラブルが発生した艇は、再度周回展示航走を指示される(後者の場合はトラブル解決後に再展示)。
周回展示の情報は、以下の情報が競艇場内のモニターで発表される。
⏺️タイム 1周目のバックストレッチ後半のタイム 1周の周回タイム・直線タイム・まわり足タイムなど独自計測したタイム(芦屋・丸亀など一部の場で公表する)
選手の体重及び調整重量・モーターのチルト角度(傾斜角度)・モーターの部品交換状況及びプロペラ使用状況
⏺️2戦目の選手は、1戦目の成績(レース・コース・着順)が公表
認められている部品交換は、以下の通り9種類。特にピストン・ピストンリング・シリンダーケースを一式まとめて交換することを「セット交換」と呼ぶ。交換する部品は新品とは限らず中古品もあり、部品によっては前年度に使用したものを交換用部品として保管・使用する。
- ピストン(2気筒エンジンの為、最大2つ。足が劣勢の時に交換する)
- ピストンリング(1つのピストンにつき溝が2つ。回転が上がらない夏場に中古品に交換して回転を上げる)
- シリンダーケース(ピストンとピストンリングが入る。足が劣勢の時に交換する)
- 電気一式(オルタネーター。電気系統は水に弱く、転覆した時に乾燥が必要になるが、2戦目がある場合、乾燥させる時間がない為、予備品に交換する)
- キャブレター(空気と燃料を調整。レバーを握った時のレスポンスが良くない場合に、洗浄したりするが、それでも治らない場合に交換)
- ギヤケース(プロペラと直結している。回転の上げ下げを行いたい時に調整)
- クランクシャフト(モーターの中心部。足が劣勢の時に交換する)
- キャリアボデー(最も大きなパーツで、排気ガスの通り道。前検で抽選してモーターを貰った時に本当に酷使していると判断した時に交換)
- プロペラ(破損した場合、新品に交換する)
これらの情報や出走表に記載されているデータを参考にして舟券を購入する
レース本番
ピットでの発走合図で全6艇がピットを離れ、スタートに備える。ピットを離れてからスタートするまでの間に各選手がとる行動を「待機行動」と呼び、選手が走行するコースを選ぶために行う「待機航走」と、コースを選んでからスタートするまでの「進入航走」に分けられる。待機行動には全国統一のルールがあり、ルールに反したコース取りを行うと罰則が科される。待機行動に充てられる時間は、競艇場によって異なる。
第2ターンマークのスタンド側を通り、小回り防止ブイを回ってバックストレッチ(バック水面)に出ると選手は艇の速度を落とす。速度を落とした際に各選手のおおよそのコース取りが決定する。第2ターンマークを回り、艇首がスタートラインに正対するまでが待機航走、正対した後が進入航走となる。スタートラインから第2ターンマーク寄りの水域を「待機行動水面」と呼ぶ。
全艇がスタートラインに正対すると各艇のコースが決定する。内側から順番に1コース、2コース、3コース…6コースと呼び、1・2コースをイン、3・4コースをセンター、5・6コースをアウトという(競艇では、枠番通りのコースからスタートするとは限らない。 ⏺️競走では第1ターンマークを最も早く回り、他の艇が作り出す波(とりわけ、モーターが引き起こす曳き波)の影響を受けずに走行することが重要となるが、 各艇が同じスピードで第1ターンマークにさしかかった場合、第1ターンマークを最も早く回るのは通常、第1ターンマークまでの距離が最も近い1コースの選手である。 一旦進入した後でコースを取り直す場合は一番外のコースに入らなければならないことが規則で定められているほか、新人選手は最アウトコースに入ることが不文律になっている(新人は技術が拙いため、内側に入ると他の艇に迷惑をかけることが理由とされている)。
上記の理由から最アウトコースに入る新人選手や、アウトコースからのダッシュ戦を得意とする選手(いわゆる「アウト屋」)はピットを出てから位置取りを争う内側の艇を横目に大きく艇を回してスタートラインから離れ、ダッシュ距離を稼ごうとしている場合もある。
待機行動はスタート前に行われることから、厳密には競走ではない。競馬における輪乗りと似ているが、輪乗りの時点ですでに枠順が決定している競馬と違い、競艇では通常待機行動中に走行するコースが決まる(ただし進入固定競走では枠番=コースとなる)。待機行動中の選手にアクシデントが生じた場合は欠場扱いとなり、その選手に関係する舟券は全て返還される。
待機行動についての規定変更
ピットアウト後の待機行動に関する規定が一部変更され、2009年5月1日を初日とする開催から順次適用された。概要は以下の通り。
- 待機行動に入った後、バックストレッチ側で低速航走しようとする艇は速やかに内線へ寄せ、内線と平行に航走する。
- 低速航走時の右転舵を「時間稼ぎ的航法」として待機行動違反とする。ただし、内線に寄せたとき及びアウトコースの艇が助走距離をとるための右転舵はこの限りでない。
- 原則として、先に「150メートル見透し線」に達した艇からインコースの優先権を得る。先に150メートル見透し線に達した艇よりも内側に進入しようとした場合は「割り込み」とされ、待機行動違反となる。
スタート
前述のように競艇のスタートではフライングスタート法が採用されている。待機行動に入った後、概ねスタート12秒前から全艇がスタートラインへ加速をつけて進入し、大時計が0秒-1秒を指すまでの間にスタートラインを通過して第1ターンマークへと向かう(艇の先端がスタートラインを通過したタイミングを「スタートタイミング」という)。これは他の公営競技と異なり、水面上で横一列に整列して静止することが難しいことに加え、水の抵抗でトップスピードに達するまで時間がかかるため。助走距離が短い艇は「スロー」、後方から全速で進入してくる艇は「ダッシュ」と呼ばれる。スローとダッシュの中間位置から進入する場合もある。ダッシュで進入する艇のうち、最もインに近い艇を「カド」と呼び、比較的有利な位置とされている。進入時の並び順を「進入隊形」(または「進入スタイル」)と呼び、インから枠番通りに進入する場合は「枠なり進入」(または「枠なり」)と呼ばれる。
スタートタイミングが0秒より0.01秒でも速い場合は「フライング(F)」、0秒から1秒以内にスタートラインへ到達できなかった場合(スタートラインの直前・直後で転覆した場合を含む)は「出遅れ(L)」と判定される(微妙な場合はスリット写真が用いられる)。競艇においてスタートの重要性は高く、選手は開催日の朝になると第1レースの展示航走が行われるまでの間、特別練習を行ってスタート勘を磨く。
「フライング」「出遅れ」「直前の出走取消」対象艇が含まれた舟券は全額返還されるほか、同一レースにおいて5艇以上がフライングまたは出遅れ(混合の場合を含む)となった場合は「レース不成立」となり、当該レースの舟券は全て返還となる(5艇がフライングまたは出遅れた場合、正常にスタートした残り1艇は選手責任外の欠場として扱われる)。(参考)フライング・出遅れ数と返還対象賭式
- 全艇または5艇がフライング・出遅れ…全賭式不成立(レース自体も不成立)
- 4艇フライング・出遅れ…3連単・3連複・2連複・拡連複・複勝式の賭式が不成立(2連単・単勝式のみ成立)
- 3艇フライング・出遅れ…3連複・拡連複の賭式が不成立
- 2艇以上が正常スタートし、全艇が返還欠場・失格…全賭式不成立
- 2艇が正常スタートし、うち1艇が失格(全体で5艇が返還欠場・失格)…単勝式のみ成立
- 3艇が正常スタートし、うち1艇が失格(全体で4艇が返還欠場・失格)…3連単・3連複・拡連複の賭式が不成立
- 3艇以上が正常スタートし、全体で5艇が返還欠場・失格…単勝式・複勝式のみ成立
- 4艇以上が正常スタートし、全体で4艇が返還欠場・失格…3連単・3連複の賭式が不成立(拡連複は的中が1組あるため成立)
- 4艇以上が正常スタートし、全体で3艇以下が返還欠場・失格…全賭式が成立、返還欠場となった番号の組み合わせのみ返還
スタート事故に対する罰則規定
選手責任と認められる「フライング」や「出遅れ」(これらを総称して「スタート事故」という)をした選手には、開催節1回目の場合は優勝戦やドリーム戦への出場ができなくなり(賞典除外)、2回目の場合は即日帰郷を命ぜられる。このほか、一定期間の斡旋停止(1本目:30日、2本目:60日、3本目:90日、4本:180日となるが「選手出場あっせん保留基準第8号」と選手会による「競走の公正確保及び競技水準の向上化に関する規程」によりフライング4本持ち以上は事実上の引退)や訓練施設での再訓練などのペナルティも科される。なお、集団でのフライングを防止する観点から2013年11月1日を初日とする開催より0.05秒以上のフライングを「非常識なF」と定義し、該当する選手には原則として「即日帰郷」の処分とすることが発表された(ただし、グランプリ・クイーンズクライマックスでは適用しない)。
SG競走などのように全国規模で発売されるレースの優勝戦や準優勝戦で選手責任によるフライングや出遅れが発生した場合は、下記のように厳しい罰則が課せられる。ただし、選手責任外による出遅れ(強風による転覆・エンジン故障などによる場合)や怪我・急病などによる出場取消の場合はこの限りでない。
以下の規定はG2が2010年4月から、新鋭戦・女子戦が2011年から適用された。
- SG優勝戦:12か月間SG選出除外(グランプリは資格を満たせば出場可能)および出場辞退期間消化後6か月間G1・G2競走選出除外
- SG準優勝戦およびグランプリトライアル、順位決定戦:以後のSG4節選出除外(グランプリは資格を満たせば出場可能)および出場辞退期間消化後3か月間G1・G2選出除外
- G1・G2優勝戦:出場辞退期間消化後6か月間G1・G2競走選出除外
- G1・G2準優勝戦:出場辞退期間消化後3か月間G1・G2競走選出除外
- 新鋭戦・女子戦優勝戦:出場辞退期間消化後6か月間新鋭戦(新鋭王座含む)・女子戦選出除外
- 新鋭戦・女子戦準優勝戦:出場辞退期間消化後3か月間新鋭戦(新鋭王座含む)・女子戦選出除外
グランプリのみ、斡旋停止期間中であってもチャレンジカップ終了時点での獲得賞金ランキングが18位以内であればグランプリに出場できる特例がある。
フライングスタート判定結果や失格(後述)のアナウンスは全てのボートレース場が場内実況アナウンサーにより観客へ告知している。
⏺️1周目第1ターンマークの攻防
競艇の競走では、第1ターンマークを最も早く回り、他の艇が作り出す波の影響(とりわけ、モーターが引き起こす曳き波)を受けずに走行することが重要となるが、各艇が同じスピードで第1ターンマークにさしかかった場合、第1ターンマークを最も早く回るのは通常、第1ターンマークまでの距離が最も近い1コースの選手である。
ただし、これはあくまでも「同じスピードで」という前提があっての話で、この前提が崩れれば成立しなくなる。たとえば、他の艇の割り込みを防ぎつつ1コースを取ろうとすると第2ターンマークとの距離を詰める形でスタートラインに正対する必要があるが、この時エンジンを停止させることは禁止されているため、ゆっくりとスタートラインへ近づいていくことになるが、助走距離が短くなるとスタートライン通過時点での速度が他の艇より遅くなってしまう可能性がある。
1980年代まではターンマークを回るときはスピードを落として小回りに回る「落としマイ」が定石だったが、1990年代に今村豊が「全速ターン」を開発した。その後、それまでの正座の姿勢でひざで立って両ひざで艇を押しながら身体を安定させて回る旋回に代わる方法として、両足を伸ばした状態で腰を浮かせ足で艇を蹴るように旋回する「モンキーターン」を飯田加一が開発しそれが各選手に普及したことで旋回スピードが増し、外側の艇が内側の艇より先に回ることが多くなった。今ではほとんどの選手がモンキーターンを行っている。
競艇の勝敗の7割はスタートから第1ターンマークまでの間に決まり、第1ターンマークを回った時点でそのレースの大まかな着順が決まるともいわれ、ここでの攻防がレースの最大の見所となる。
決まり手
決まり手とは、1着艇の勝因のことをいう。決まり手のほとんどは、1着艇が第1ターンマークでどういった動きをして1着を確定させたかによって決まる。
- 逃げ - 1コースの選手が勝利。進路としてはインからインとインからアウトの2つがある。
- 捲り - 1コースより外の選手が、自分よりも内のコースの選手よりも先にターンして勝利。進路はアウトからアウト。スタートの速さが要求される。
- 差し - 1コースより外の選手が、ターンにおいて、自分よりも内のコースの選手の内側に入り勝利。進路はアウトからイン。内側のコースが空くことを予見して行う「早差し」と、内側のコースが空いたのを確認してから行う「遅差し」がある。
- 捲り差し - 捲りと差しの複合。捲ると見せかけて差しに切り替えるため、高度なテクニックを要する。
- 抜き - 第2ターンマーク以降の場所で先行する選手を抜いた場合。
- ツケマイ - スピードを落とさずにターンし、内側の選手を潰して勝利。捲りを応用した高等戦術で、内側の選手を外から抑え込む形で失速させ、その瞬間にターンする。語源は「つけまわり」(内側艇につけて回る、の意味)から。
- 切り返し - コース変わりによる勝利。外のコースから一気に内側に入る。出遅れた選手が行う場合を「イン変わり」という。
- 恵まれ - フライングや出遅れにより、欠場艇が発生した場合。
道中(ゴールまで)の攻防
1周目1マークで後手を踏んだ艇は1つでも着順を上げるべく、「抜き」を試みることになる。1周目1マークで2番手以下だった艇が、その後逆転して1着になった場合、決まり手は「抜き」となる。なお、イン(1コース)の選手が「逃げ」に失敗したのち、追い上げて逆転した場合も「抜き」となる。スポーツ新聞等には「抜き」は「道中競り」(○周○マーク)と記述される場合もある。
道中2、3番手の艇が「抜き」で1着になる例はままあるが、6番手(最下位)の艇が追い上げて1着となることは極めて稀である。これは、水上では艇の後ろに「引き波」が生じ、後ろの艇の推進力を大きく損なうためである。なお、前述のフライング等があったときの決まり手は「恵まれ」となる。1位の選手は1周目でほぼ固まってしまう場合が多いが、2着以下については前に行く艇の引き波がターンマーク近くに残ることで最後まで順位争いがもつれる要因となる。
ウィキペディアより抜粋